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2017.07.10

【定年起業への挑戦】ニッチな楽器のメンテナンス業

 井口敦さん(64)は大手電機メーカーに入社し、調達部門の業務などを担当、米国にも駐在するなど活躍しましたが、54歳のときに早期退職制度で退社。外資系の建機メーカーに移ります。そのメーカーを定年で離れた後、東京都の外郭団体勤務を経て、いよいよ自分がやりたかった仕事で開業しました。

 世の中にはピアノやギターなどのメジャーな楽器のほかに、あまり知られていない楽器があります。たとえばイラン発祥の「ハンマー・ダルシマー」、スウェーデンの「ニッケルハルパ」、アイルランドの「アイリッシュブズーキ」などです。

 「こういった楽器は町の楽器屋さんには売っていませんが、インターネットのおかげで、自分で直輸入できるようになりました。しかし、それをメンテナンスする人がいないのです」(井口さん)

 それらの楽器を修理したいときは、海外のメーカーに送り返すしか方法がありませんでした。その運賃がバカになりませんし、時間もかかります。井口さんは、それらのメンテナンスを行う工房「ダルシクラフト」を立ち上げました。

 「日本には、これらのニッチな楽器の演奏者が少なくとも1000人程度います。そのニッチマーケットに対応しようと思いました」

 井口さんは郊外のレンタル・シェア倉庫を借り、一角を工房にして作業しているそうです。

 「そんなに大きく稼げなくてもいいんです。もうすぐ出る年金にプラスすれば十分にやっていけます」

 奥様も弦楽器奏者で、メンテナンス後の検品にも協力してくれているそうです。(取材・構成:藤木俊明)